ダイアログ:描くことと創ること –ことばからの広告史–
「広告をつくる」という言葉の多くは、モチーフとなる商品をメディアというカンヴァスに上手に描くことを意味している。一方で広告は描写を装った創造であることも多い。男性用便器をひっくり返して「Fontaine」と名付けるとアートになったように、美しいフォルクスワーゲンビートルの写真に「Lemon.」と言葉を添えると不良品になる。ファベーラの街の壁をペインティングすることでスラムの街が再生 されたように、制汗剤のシーブリーズのキャップを交換して使い切ると二人の願い が叶う。世界最初の広告は、古代エジプトでパピルスに書かれた「 街で一番の機織屋が逃げた奴隷探しを依頼する」 ものであったと言われている。しかし、この広告が読まれた瞬間に奴隷に逃げられた機織屋は「街で一番」 になった。 広告は爆誕した瞬間から描写を装って価値を創り出していた。広告史をことば(コピーライティング) による価値創造の歴史として実務経験とともにリフレクションしていく。