LGBTQの人々が社会において自らの居場所を作り出すために、どのような表現が可能だろうか。レズビアンやゲイなど自らのカテゴリーをもとに対等な関係を求めるアイデンティティに関する政治は、分断がさらに強固になる社会において行き詰まりを見せているので はないか。「フツー」の生活プロジェクトは、レズビアンやゲイの生活を、素人である「フツー」の人々が、マンガという「フツー」の媒体で、奇妙なもの (クィア) ではない「フツー」なものとして表現していく。それは、社会から不完全なものとして排除されがちなシングルマザーの「 フツー」の生活と並べられ、われわれ全員が経験してきた奇妙なコロナ生活、あるいはわれわれ全員が通過した23歳のクィアな生活とも節合さ れる。この「クィア」という世界観、そしてそれを表現するための方法、それが生み出す効果などを議論すると共に、対等な権利を主張する政治構造下における既存のカテゴリーの不安定さを、感性という水準において暴くエステティックス (美学)の力について考える。

<書籍> フツーの生活プロジェクト: クィアでないクィア生活
https://www.amazon.co.jp/dp/4990956672
さいはて社
https://saihatesha.com/books02-27.html

2023年3月2日(木) 19:00-20:30
ZOOMにて無料配信

申し込みはこちら
https://dialogue006.peatix.com

【登壇者】

image
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ(京都大学大学院文学研究科教授)
専門は日本映画・映像文化論。 東アジア映画、ドキュメンタリー映画、エコロジー映画、 映像アーカイブ問題、クィア理論にも同様に取り組んでいる。趣味は囲碁と太極拳。愛犬の名前はビーヌ (Binoo)。 本書のマンガにも時々登場している。

image
國永 孟(京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程)
現在、 キングス・カレッジ・ロンドン大学(イギリス) に研究生として留学中。専門は1930-60年代の英米映画史、スター研究、パフォーマンス文化論。最近は芝居の聖地であるロンドンのウエスト・エンドに入り浸り、 舞台芸術の沼にハマっている。もともと音や光などの刺激に敏感な強度のHSPであるが、2018年にパニック障害と診断されて今に至る。

image
早川 宏美(デザイナー/イラストレーター)
グラフィックデザイン、 イラスト、手書きの文字を活かしたデザインが得意技。京都の編集ユニット・ホホホ座ではデザイン要員として活動。マンガ制作は今回が初挑戦。最近の趣味は、刺し子と落語好きが高じてはじめたお三味線。本書では、組版・ 装幀も担当している。

image
大隅 直人(編集者/出版者)
1992年京都大学文学部哲学科社会学専攻卒業。出版社勤務を経て、2002年フリー編集者として独立。2010年11月大隅書店(現・さいはて社)を創業し、学術書、人文書、小説、詩集、絵本、写真集など多岐のジャンルにわたる書籍を出版。

【聞き手】

image
山内 裕 (京都大学経営管理大学院教授)
京都大学工学部情報工学卒業、京都大学情報学修士、UCLA Anderson Schoolにて経営学博士(Ph.D. in Management)。Xerox Palo Alto Research Center 研究員を経て、京都大学経営管理大学院に着任。鮨屋、フレンチ、アパレルなどのサービスをはじめ、デザインやアートなどを含めた文化の経営学を研究している。主な著書には、『組織・コミュニティデザイン』(共立出版、共著)、『「闘争」としてのサービスー顧客インタラクションの研究』(中央経済社)など。2021年度から文部科学省価値創造人材育成拠点形成事業として「京都クリエイティブ・アッサンブラージュ」を立ち上げる。
https://yamauchi.net