エステティック・ストラテジー
エステティック・ストラテジーは、大きな価値転換の実現に向けて、社会において未だ十分に表現されることのない、「無-意味」を捉え、それを積極的に救済していくことで既存の意味のシステムを宙吊り(=「美学: aesthetics」)にする人文社会学の視座から編まれた独自のイノベーションの方法論である。世の中に現出している取るに足らない事象を「よく見る」ことで、微妙な社会の変化を読み解き、そこに自身(組織の課題)を位置付けることで新しい時代を創造する。
エステティック・ストラテジーは創造性の源泉を「社会をよくみる」ことであると考える。人々を振り向かせえるようなイノベーションの実現には、現代社会をかたち作る世界観とイデオロギーの微妙な変化を捉える必要がある。このような小さな変化は、既存の社会の意味のシステムでは表象されない「無-意味」なものとして、様々な具体的事象の中で立ち現れる。このことを理解し、時代を読み解く感覚を身につける。
イノベーションは既存の社会の変化である無-意味を積極的に際立たせ、価値転換を引き起こすことで達成される。この無-意味の救済は、既存の意味のシステムの中で意味を新たに分け与えることではなく、そのシステム自体を揺さぶる解体を伴う実践である。このようなエステティクス(=「美学」)の持つ、新たな社会を切り拓くための政治性を理解することで、社会批判としてのイノベーションのあり方を理解する。
実際に時代を切り拓いていくためには、捉えた無-意味を新しい一つの世界観を持った具体的な表現として実装していく必要がある。その際、既存の世界観を引きずることなく、潔く切断した表現を作り込んでいく必要がある。ここではそのヒントとなる、世界観の綴じ方、象徴としての空虚な記号によって喚起される欲望のメカニズムや享楽などについて解説する。
エステティク・ストラテジーの理解と実践の参考となるように、ここではよく知られている具体的なイノベーション事例の読み解きをいくつか提供する。
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