イノベーションは単にサービスやプロダクトを世に投じることではない。人々が信じていた価値観や意味を置き換えるものだ。たとえばスピードを捨て、定時運行に舵をきった蒸気船、通話をすることではなく、ビジネスや文化のプラットフォームを提供したスマートフォンなど。そこにはこれまで人が良しとしてきたもの、重視してきたKGI / KPIを置き換えたり、反転させてしまう力がある。イノベーションの実現には既存のKGI / KPIを追求することではなく、むしろそれを反転させる可能性を考えることが重要になる。 「無意味」は、今の社会から無視されているもの、軽視されているものを指す。一見取るに足らないと思われる無意味はしかし、明日の「意味」の可能性をはらんでいる。コンテクストデザインを通して「取るに足らないもの」の価値を探る渡邉康太郎氏と、「既存の意味のシステムの解体」をイノベーションとするKyoto Creative Assemblageの講師陣が対談を通して「無意味」の意味を問い直す。

ゲストスピーカー

渡邉 康太郎(わたなべ・こうたろう)

Takram コンテクストデザイナー。使い手が作り手に、消費者が表現者に変化することを促す「コンテクストデザイン」を掲げ活動。組織のミッション・ビジョン・パーパス策定からアートプロジェクトまで幅広いプロジェクトを牽引。関心事は人文学とビジネス、デザインの接続。主な仕事にISSEY MIYAKE の花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」、一冊だけの本屋「森岡書店」、北里研究所、日本経済新聞社やJ-WAVE のブランディングなど。同局のラジオ番組「TAKRAM RADIO」ナビゲーターも務める。著書『コンテクストデザイン』は青山ブックセンターにて総合売上1位を記録(2022年)。趣味は茶道、茶名は仙康宗達。大日本茶道学会正教授。Podcast「超相対性理論」パーソナリティ。国内外のデザイン賞の受賞多数。また独iF Design Award、日本空間デザイン賞などの審査員を歴任。慶應義塾大学SFC特別招聘教授。