この数年間、特に日本のなかで「アートがビジネスに役立つ」 と言われます。 思考や行動パターンなどいろいろな点からアートが評価されていますが、「アートヒストリーがビジネスに役立つ」 とはあまり聞きません。しかし、 アートヒストリーの追求がビジネスに貢献する力は軽視できません 。
19世紀後半、英国でウィリアム・ モリスが先導したアーツアンドクラフツ運動の影響をうけたロンドンのリバティは自らの店舗でモリスのテキスタイルを扱い、 花や植物の柄は世界中に定番として普及します。 そのリバティが今年、 FuturLibertyという幾何学的なデザインを主体とした 新シリーズを発表しました。その契機は、 これからのデザインのネタを20世紀初め、 アート運動としてあった未来派に探ったことにありました。 ビジネスがアートを神秘化して利用するのではなく、 アートヒストリーに立ち帰り、 自らのアイデンティティを見つめ革新する可能性を議論します。

ゲストスピーカー

安西洋之(あんざい・ひろゆき)

モバイルクルーズ株式会社代表取締役。De-Tales Ltd.ディレクター。東京とミラノを拠点としたビジネス+文化のデザイナー。欧州とアジアの企業間提携の提案、商品企画や販売戦略等に多数参画してきた。2000年代からデザインを通じた異文化理解の仕方「ローカリゼーションマップ」の啓蒙活動をはじめた。2017年、ベルガンティ『突破するデザイン』の監修に関与して以降、意味のイノベーションのエヴァンジェリストとして活動するなかで、現在はラグジュアリーの新しい意味を探索中。著書に『メイド・イン・イタリーはなぜ強いのか』、『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』、『イタリアで、福島は。』、『ヨーロッパの目、日本の目』。共著に『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』『デザインの次に来るもの』、『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』。訳書に、マンズィーニ『日々の政治』。監修にベルガンティ『突破するデザイン』。

中野香織 (なかの・かおり)

服飾史家/作家。イギリス文化~スーツおよびダンディズム~ファッション史およびモード事情~ロイヤルスタイル~ラグジュアリー領域全般へと関心を広げてきた。経産省ファッション未来委員会委員。日本経済新聞、Forbes JAPAN、JBpress autograph、北日本新聞、LEONなど多媒体で連載中。著書は『英国王室とエリザベス女王の100年』(君塚直隆氏との共著、宝島社)、『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義』(安西洋之氏との共著、クロスメディア・パブリッシング)、「『イノベーター』で読むアパレル全史」(日本実業出版社)、「ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史」(吉川弘文館)、『モードとエロスと資本』(集英社新書)、『ダンディズムの系譜 男が憧れた男たち』(新潮選書)ほか多数。東京大学大学院修了、英国ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学国際日本学部特任教授(2008~2018)、昭和女子大学客員教授(2018~2021)を歴任。