これからビジネスパーソンが学ぶべき創造性 〜3つのデザイン・アートプログラムの「これまで」と「これから」〜

現在のビジネスパーソンが学ぶべきものとは何か?

日本の創造性教育をリードし多くの修了生を輩出してきた、多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム(TCL)、武蔵野美術大学価値創造人材育成プログラム(VCP)、そして人文学的な視点から独自の創造性を探究してきた京都クリエイティブ・アッサンブラージュ(KCA)の3つの履修証明プログラムの歩みと思想を手がかりに、今後のビジネスや経営におけるアートやデザインの未来を議論しました。

公開作戦会議

イベントの詳細はこちらです。https://assemblage.kyoto/kca-tcl-vcp/

このイベントのふりかえりをNewsletterで書きました。

https://kyotocreativeassemblage.substack.com/p/475

それぞれのプログラムの特徴もよくわかるので、内容を効率的に知りたい方にはお勧めです。国内で同じように一般的なビジネスパーソン向けに展開しているプログラムの最先端の議論がわかると思います(これらは一般ビジネスパーソン向けということで、他にもエンジニア向け、地域にフォーカスしたもの、学位プログラムとか色々あります)。

多摩美TCLはデザインのアプローチを基礎から学ぶことができる貴重なプログラムです。国内では早い段階から始めて、数多くの修了生を輩出してきました。武蔵美VCPは、アートに着目した問題意識を持って、アーティストも中心になって展開されてきた特徴的なプログラムです。

ここでのポイントは、アートとビジネスの関係です。TCLでは美しい未来というように美意識を重視し、プログラムと並行して、ボールペンを使い切るまで絵を描く演習を課しています。VCPは教員であるアーティストが参加し、アートを体験して学ぶところから始めて、後半はプロジェクトを立ち上げていくというプログラムです。京都クリエイティブ・アッサンブラージュでは、京都芸大の教員が開発したアート演習で、実際にアート作品を制作します。

しかしながら、このアートの学びとビジネス実務は直接には結びついていません。どのプログラムも、アートを学ぶことがジワリジワリと身体的に効いていく、という立て付けになっています。その後プロジェクトを実施するとき、意識の変化や創造性に関する自信となって間接的な効果が期待できるというわけです。

「そうすると、アートはビジネスに結びつくのかわからないじゃないか」と思われるかもしれません。しかしこれこそがポイントなのです。なぜなら、そもそもアートは、目的や意味、既存の価値体系を『中断』することそのものだからです(アートの美学的体制と言います)。ビジネスに直接応用するという考え方を中断させることこそがアートの役割であり、つまり『ビジネスと直接結びつかないこと』自体が、アートの定義の一部なのです。だからこそ、アートがビジネスにとって重要となるという逆説が生まれます。

ここで取りうるアプローチは、その『中断』を忠実に維持し、アートは身体的な力として間接的にジワリジワリと効いていくというあり方に留めることです。これは間違いなく正しい選択です。具体的にアートがビジネスの「役に立つ」と説明してはいけないのです。そうしてしまうと、それはもうアートではなくなってしまうからです。

しかし、もうひとつのアプローチがあります。それは、ビジネスそのものの中に『アートの中断』を持ち込むこと。むしろ、ビジネスとは中断することであるというところまで突っ切ること。京都クリエイティブ・アッサンブラージュが明示的にやろうとしているのは、まさにこれです。経営学側にいる人間として、私は「これしかない」と考えました。

イノベーションとは、既存の意味の流れを中断し、わけのわからないものを生み出すこと。そのためには、意味を与えられていない敗者を救済すること。そして、一切の意味を込めず(「よい」ものを安易に提案せず)、価値の階層を打ち立てず、中断そのものを潔く表現すること。これはアートがやっていることそのものですが、ビジネスの中心にあるイノベーションの本質もまた、この「中断」にあります。過去に社会を変えてきたイノベーションは、常にこれを成し遂げてきました。

これは危険な挑戦ですので、いきなりこれを学ぶというのは、たしかにかなり無理があるとは思います。京都だからこそ、こんなヘンなことでも好き勝手にやっていられるという側面もあります。だからこそ、アートに関する上記の2つのアプローチは両方が必要であり、むしろ京都クリエイティブ・アッサンブラージュのアプローチは、一通り学んだ後にチャレンジすべきものなのかもしれません。実際に、TCLの修了生が多く参加してくれています(VCPの修了生もそのうち…)。

3つのプログラムは補完関係にあります。京都クリエイティブ・アッサンブラージュだけでは無理なのです。今後も連携して、ビジネスパーソンにとって重要なことを展開していきたいと思います。